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2009/02/23

僕のフューチャー

アナログフィッシュ
バック・イン・ザ T.K.T.K.
2009.2.21.Sat.京都磔磔

あれから1年。私も1年ぶりの磔磔。

あの時は雪が降っていて、本当に寒くて、どんなライヴになるのか不安だった。ドラム抜き、ギターヴォーカルとベースボーカルの2人でライヴをやるなんて、無謀というしかなかったのだから。

今回は、最初からわかっていた。絶対、いいライヴになるはずだって。

1年前、ドラムセットがなかったステージがやたら広く思えたのだけれど、今回は本当に広くなっていたような気がした。ステージ上手側がすっきりしていたと思うのだけど記憶違い? ふっとドラムセットに目がいった。衝撃が走った。

・・・グレッチ!!

しばし絶句。グレッチのドラムセット。ビッツくんがドラムを新調したのは知っていたけれど、まさかそれがグレッチだなんて。どうしても州さんを思い出してしまうではないか。日本のロックドラマーでグレッチのセットを使っている人なんて数えるほどだろうに、よりによってなぜ・・・。何ともいえない気分になる。

それでも1年前と比べると、客席の空気が安定している。季節が巡って、大きく逞しく自信に満ちた彼らを観れるとみんなわかっていたからね。

出囃子「ダンシング・クイーン」にのって、いつも通り元気いっぱいな健ちゃんを先頭に入場。4人が肩を組んで、恒例のアナログ会議。いつもより長い。気合いが入る。

「ダンスホール」からスタート。沸く客席。続いて「Clap your hands!」「スピード」と最初からがっちり飛ばしていく。音を鳴らし切り、踊り倒し、熱気を増す空気の中で下岡さんが叫んだ。

空気薄いよ!

そこから下岡さん新曲「チアノーゼ」。これがすごかった。パンクだった。下岡晃は実はパンクだったんだ。はっきりと、ざっくりと、掻き乱し、斬っていく。

うろ覚えだけれど歌詞は「どこからか伸びてきた手が僕を締めつける」「空気薄いよ」「いつもテーブルの隅っこに座ってる」「そこから真ん中を見るとみんな大騒ぎ」というような感じだった。

ああ、これ、私だ、と思った。テーブルの隅っこから真ん中を見ているタイプの人間。これ、私の姿だ。下岡さんに全部見抜かれてしまっているような気がして、直立不動となった。動けない。

次の「ほら」でほっとした。直立不動を解いた。やっと余裕ができて、磔磔ってこんなに音響良かったっけ?と思った。一つ一つの音がよく聴こえて気持ちいい。

「LOW」にぐっときた。変拍子、独特のグルーヴ、影と闇。「たが」が外れて壊れそうになりながら、ものすごいエネルギーで前へと突き進んでいく。破滅しそうで、でもギリギリのところで形を保っているという、この曲がもつ美学を見事に成立させていた。特にビッツくんのドラムがそのギリギリ感を出せていた。かっこいい。

下岡さん、「無力のマーチ」を客席に盛大に歌わせる。「ほら、あんな風に歌って。もうあの人30歳になるけど」と下岡さんが健ちゃんを指差す(笑)。変なポーズで客を煽る健ちゃん。笑いと同時に、客席からの声もどんどん大きくなる。

無力、無力、無力な僕らの毎日
無力、無力、無力な僕らのマーチ

こんな歌詞なのに、みんな笑顔。逆説的でねじれた世界。それをさらに裏返して鮮やかに目の前に出されると、下岡さんってやっぱり普通じゃないな、天才だな、と思う。

ちなみに健ちゃんは、2/23が誕生日。去年のこの日は例の磔磔ライヴ、今年もこの日に名古屋でライヴがある。去年と同じく「皇太子さまと同じ誕生日です」とアピールしてた(笑)。

健ちゃん新曲「ハッピーエンド」。甘くて明るいメロディ。こっちが照れる。その次は「世界は幻」。「ハッピーエンド」のあとで「世界は幻」だなんてシニカルだなあと思ったのだけれど、私は健ちゃんの鬱屈ソングが好きなので大歓迎だった。「LOW」でもそうだったのだけれど、初期の曲にビッツくんのドラムが馴染んできたことが感じられて感動しながら聴く。

しかし山場はここからだった。下岡曲、祭り状態。

まず新曲「平行」。「ヘイコウ」は「平行」「並行」「閉口」「平衡」だった。「平行線の上に立って」「交差する点を待っている」というフレーズを繰り返しながら、様々な世界で「ヘイコウ」しているストーリー。頭上を直線が飛び交い、離れたり交わったりしながら、人と人と繋げていく。幾何学的かつ立体的な世界が浮かび上がった。下岡ワールド大炸裂。

次が「ベッドのフューチャー」。これ、以前1回だけ演奏したことがあるんじゃないかな。曲名だけはどこかのサイトで見たことがある。私は初めて聴いた。「最後の一人が息をした、硬いベッドの上で」「無菌室の中で」「僕のフューチャー」「僕のこと? 君のこと? MEのこと? YOUのこと? WHOのこと?」というような歌詞。ちょっとSFな世界。もうすぐ世界が終わってしまう事実を突きつけている歌か?なんて思いながら聴いていた。ふっと意識を飛ばされた。

そして「PARADOX」。下岡さんがこんなことを言い出した。

今までシーケンサーを使ってこの曲をやっていたけど、今日は完全に生でやります。そこでみんなにお願いがあるんだけど、「ぱーらーどーっくす!」って歌ってほしいんだ。今日リハーサルでやったんだけど、何かしゅんってなっちゃって(笑)。どこで歌うかは、あの人(健ちゃん)の顔を見てたらタイミングわかるから(笑)。

こういうことは磔磔でしかできない、と不覚にも感動した。彼らはそれを知っている。彼らを活かすハコ、彼らに活かされるハコ、そしてそのハコに集う人。すべてにおいて幸せな関係。磔磔とアナログフィッシュの信頼関係を見た。

磔磔マジック。今夜はそのマジックを彼らから仕掛けて起こした。平然と当たり前のように。伝説の夜が静かに温かく生まれた瞬間だった。

そして最後の盛り上がり。「Hello」では「ハロー、ニューヨーク!」の呼びかけが復活して、終演に向けて熱気が増していく。「アンセム」のイントロ、その立ち昇り方があまりにも鮮やかでびっくりした。何度も何度も聴いている曲なのに、いつにも増して新鮮に聴こえた。「Sayonara 90's」のふっきれ方もキレを増していて、キラキラと輝きながら見事に着地した。

最後は「ハローグッバイ」だなと思っていたら健ちゃんが「ハッピーエンドです」とタイトルコールを間違ってしまって場内大爆笑。「一番大事なところで・・・」と悔やむ健ちゃんに「なかったことにしよう!」と下岡さんが返す。健ちゃん、かわいいわー。

改めて旅立ちの歌「ハローグッバイ」。幸せにほっこりして終了。

アンコール。

去年のことに触れる。下岡さんが「よくあんなのやったよね」と笑い、「去年も来た人、どれくらいいる?」と挙手を促す。下岡さんいわく「50%くらい」手が挙がった模様。健ちゃんが「去年を知らない人のために説明すると、打楽器がないので足元に箱を置いて、それを足踏みで鳴らしながら演ってたんです。2人で足をつらせながら」と語りだす。それを聴きながら、そんななか今日も演奏した「スピード」「LOW」「Hello」を無理矢理2人でやりきったことを思い出し、感無量となった。あれからここまで来たんだなあ、と。

そんな感傷をぶった切るように、下岡さんが「Do you still need BGM?」と叫んだ! もちろん「No thank you!!!」と叫び返して「BGM」。下岡さんがやたら楽しい!と言って嬉しそうだった。「さすがFM802のパワープッシュだっただけある!」と、とてもご機嫌。

このあと下岡さんの口から、3月か4月にはレコーディングに入るということが明かされた。今日やった下岡さんの新曲、全部音源化希望。世界にガツンと殴りかかってほしい。

締めは「Life goes on」。

全部歌詞を覚えているんじゃないかと思うくらい、ライヴで何度も何度も聴いた曲。「遠回りじゃないよ 真っ直ぐな道を蛇行しているだけ」という歌詞に何度救われたことか。でも今晩はそういう湿っぽい空気じゃなくて、心軽やかに、でもしっかり足あとを残しながら、確実に前と、確実に未来へと進んでいく後ろ姿が見えた。

彼らの未来。

希望と愛と、軽やかさと深さと、最初と最後と、静と動。世界の全部、カオスと法則が見えた。

完全に満たされて放心した夜。

4人で磔磔に戻ってきたアナログフィッシュ。今日で足りないピースがひとつ埋まった。その瞬間をこの目で見た。鮮やかに彩られたこの夜を忘れない。忘れてはいけない夜がまた増えた。


<セットリスト>

ダンスホール
Clap your hands!
スピード
チアノーゼ
ほら
LOW
無力のマーチ
ラジオ
ハッピーエンド
世界は幻
平行
ベッドのフューチャー
PARADOX
Hello
アンセム
Sayonara 90's
ハローグッバイ

en.
BGM
Life goes on

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