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2009/01/31

真白

シンシロ / サカナクション

前作「NIGHT FISHING」でサカナクションと出会った。もう1年近く前のこと。当時のレビューに、エレクトロ色が強いけれども硬く冷たい音ではなく、柔らかく空気を含んだ湿り気ある音を鳴らしている彼らに惹かれた、と書いた。

その後、生で聴いて本当に驚いた。音のかっこよさが他のバンドと格段に違うのだ。意志を持ってひとつひとつの音を作っていることが伝わってきた。初夏の大阪城野外音楽堂で、彼らの目指しているものの端っこを確かに掴んだ気がした。

そしてサカナクションの魅力は確固たる信念で作りこまれた音だけではなく、フロントマン/ソングライター山口一郎が書く詩にあると思う。「歌詞」じゃなくて「詩」。まるで、文学作品。

山口くんの昔のブログを読むと、彼が根っからの文学青年であることがよくわかる。何年か前の文章なんて青臭くて本当に良い。あと、本当に暗い(笑)。でもこの暗さが好きだ。文学の大部分は、闇から生まれると言ってしまってもいいから。

山口くんがインタビューで「文学の力を信頼していた」と言っていた。私も若い頃は小説を読み漁っていたから、この心の持ちようはよくわかる。文学が私にとって「世界のすべて」だった時期があった。この「文学」の2文字を「映画」とか「漫画」とかそれこそ「音楽」とか、そんな言葉に替えれば大いに肯く人はたくさんいるでしょ?

新譜「シンシロ」の10曲目「アドベンチャー」は、こんな歌詞から始まる。

Utopia 確かめるよ 繰り返すロックと本 
混ざり合うかどうかを

ああ、これだ、と思った。音楽と文学、私をかたち作るふたつを結び付けてくれるバンド、サカナクション。無性に詩集を読みたくなった。自分も何だか青いなあ。

詩の話ばかりになってしまったけど、楽曲も面白い。1曲目「Ame(B)」には大爆笑。まるでクイーンの「フラッシュ・ゴードン」のような荘厳な幕開け。前半は「ライトダンス」、先行シングル「セントレイ」、リード曲「ネイティブダンサー」とテクノ/エレクトロ色が強い楽曲が並び、インスト「minnanouta」を挟んで後半は1stアルバムからの流れを汲む、フォーキーな感触がする楽曲群。

特に好きなのは「ネイティブダンサー」「涙ディライト」「enough」かな。「ネイティブダンサー」は、闇と光の対比。光の中で光っても輝かない。夜の闇の中だからこそ輝く。「涙ディライト」はポップで、草刈姐さんのベースラインを堪能できる曲。「enough」は山口一路の独白。心の裏まで歌う詩に、ぐっと締め付けられる。

前作をタワレコで視聴した時、「このバンド、売れるな」というのが第一印象だった。今、本当に売れてる。オリコンチャート8位。2月に始まる全国ツアーでもソールドアウトする所が出てきた。この次はZeppだったりするんだろうか。すごいな。

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