普通に異常なワールドで異常に普通なデイズ
Fish My Life / アナログフィッシュ
誕生日プレゼントとしてダンナが買ってきてくれた。ありがとう。
すぐに聴くのがもったいなくて、まずはじっくりと歌詞を読んだ。1曲目から9曲目まで。最後のクレジットも最初からじっくりと咀嚼しながら読んだ。最後の1行でハッとした。
with hope and love: 斉藤州一郎
一瞬にして涙目。ダンナが目の前にいなかったらもっと泣いてた。
***
半分以上の曲は歌詞を覚えてしまうくらいにライヴで聴いている。それが音源として、形あるものとして、自分の手元で再生できるものとして、発表されたことの幸せ。
1曲目 「才能」
すべての楽器を健ちゃんが演奏。しかも「怨念ルーム」(自室のことをこう呼んでいると何かで見た気がする)で録音した宅録。健ちゃんらしい鬱屈や屈折がよく表れてるな。
2曲目 「ダンスホール」
健ちゃんも下岡さんもいつもの歌い方(声?)とは違っていた。お互いに似せた感じ? ライヴとかなり違うので最初は違和感があったけど、聴いていくうちになじんできた。しかしながら、もっくんのドラムが大迫力ですごい。まるで、「とにかく踊れお前たち!」と指をさされて言われているよう。
3曲目 「PARADOX」
完全にノックアウト。完成度が高すぎる。柔らかいところ、強いところががはっきりしていて、ダイナミック下岡ワールドに仕上がっている。アナログを聴いたことない人、次の歌詞に共感できたら是非是非買って聴いてみてほしい。
「何が正しい」とか「誰がおかしい」とかじゃなくてさ
何を信じるかどれだけ信じられるかなんだよ
4曲目 「Clap Your Hands!」
健ちゃんの開かれた世界。「ツキモノが落ちた」と山崎さんに言われてたけど、この曲を聴くと本当にそう思う。鬱屈健ちゃんも大好きなのだけど、こうやってハッピーになれる陽性の曲もいい。
5曲目 「Sayonara 90's」
このブログでもう何回もこの曲について書いている。LOVE と HOPE を真っ直ぐ照れずに歌った曲。実はこういう「希望」とか「愛」なんていう言葉の裏には「偽善」「軽薄」「打算」というものが透けて見えるような気がして今まであまり信用できなかったのだけれど、下岡さんが歌うこの曲には何かこうやって歌うことの根拠があるように感じられた。しっかり地に足がついた、力強い意志が私には見える。だから信じる。
6曲目 「ほら」
健ちゃんの初期の曲。次の歌詞が、私が高校生の時に感じていたこととほとんど同じなので驚いた。
次の憂鬱までの執行猶予
いい気分はそう長くは続かないから大事に味わっておけ
365日のうちの僕の 300日は憂鬱なんだ
高校生の時、頭痛もちだった。頭痛は定期的に襲ってくるし、受験のプレッシャーがすごかったし、人間関係で悩むこともあった。だからこの歌詞のようにどこか暗い影を心のうちに持っていたように思う。そういう若かりし時代の苦悩と、若かったからこそ感じることができた日々の喜び(小さなことで一喜一憂してたなあ)が蘇って妙に嬉しくなった。
7曲目 「無力のマーチ」
想像していたよりかわいらしい曲だった。下岡さんしかこんな曲は作れないだろうと思う。シニカルなのにおとぎ話というか童話的というか、そういう世界も捻じ込んであって無力な自分を相対化して見ることができそうだ。そうなれば、無力な自分をまるごと笑い飛ばすことができて、逆に力が湧いてくるような気がする。
8曲目 「いずる」
健ちゃん弾き語り。この人の歌声は本当に素晴らしい。真っ直ぐに前に飛ぶ。歌詞にある「君」って何なんだろう、と思った。ひょっとしたら「太陽」とか「光」とか、人じゃないものなのかもしれないな、なんて勝手に想像。
9曲目 「Lover」
大名曲。健ちゃんの超ドラマティックワールド。GRAPEVINE亀井さんのドラムがハマりまくっていて、完成度の高い曲になっている。ドーンと厚い音の塊が飛んでくる。それをがっちり受け止めるのが快感。
***
じっくり練って作りこんだ前作「ROCK IS HARMONY」とはあきらかに違う質感。短い時間で勢いよく作った感じが溢れている。だからといって薄かったり軽かったりする感じはしない。彼らも私たちファンも、待って待って、待った果てに生まれた作品。まずはその喜びを記したいと思う。そうだ、喜びたい時は素直に喜べばいいんだから。
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コメント
こちらでははじめまして、おじゃまします。
大きくうなずきながら感想読みました。
いいアルバムです本当に。それを楽しむことができてうれしいことしきり。
私は最初に歌詞カードを見ずに、ドラムあてを試みたんですが、もりよしくんとコテイスイしかあたりませんでした。ううむ。
投稿: Qdelic | 2008/07/18 17:14
Qdelicさん:
コメントありがとうございます。
自分が書いたものを分かってくれる人がいるのは嬉しいです!
そして自分の好きな音楽を「いい」と胸を張って言えるなんて、これまた幸せです。
今は「PARADOX」リピートしまくりです。
ドラムあてですかー。楽しそう! やってみればよかった。
(と言っても髭やバインをそれほど聴いてないから当たらないと思うけど)
豊夢さんや亀井さんのドラムがセクシーで、くらくらです。
投稿: yama(Key) | 2008/07/18 22:03
ううむ、日々くだらなさすぎるよーなことで一喜一憂しまくってる身に染みる言葉でした(笑
あああ更にアナログ聴きたくなってしまいました!
変なこと言ってしまいますが、こんなひねくれた私でも、yamaさんの文章は嘘がないので素直に「わー素敵なんやろなー」と思えるんです
らぶとぴーすがほのほのあったかい文章、読み手まで気持ちよくなっちゃいますー´ω`
投稿: ちひろ | 2008/08/06 04:54
ちひろさん:
是非アナログ聴いてみて下さい。9曲2000円と安くてお買い得だし!(笑)。
若い頃の方が変なこだわりがあって手を出さないジャンルが多かったですね。今は「いいものはいい」と素直に思えます。
それでも薄っぺらい「愛」を歌うような曲は嫌いですが、アナログが歌うLOVE+PEACEは砂に水が染み込むくらい自然に受け止められた。自分もひねくれてますから、この状況にびっくりしましたよ!
そしてそうやって素直に音楽で感動できる自分自身を、まだまだ捨てたもんじゃないなって思うんです。自画自賛?(笑)
投稿: yama(Key) | 2008/08/06 23:00